設計図から自社の加工図を書き出し、相手方の承諾を得てからの工程になります。
製作工程を確認して必要な製品をリストアップしていき、製品を製作するには何が必用かをまとめていきます。そこで必要になる材料を集めます。
製品を作るのに必要な部品を書き出していきます。
- H鋼
- コラム
- ダイアフラム
- ベースプレート
- 裏当て
- スプライスプレート
- ボルト(HTB)
ザックリこんな感じです。上記をどのぐらい、どのような寸法で、どのサイズで、などを物件で求められている製品を作るのに用意するもの、量が変わります。
タイコの指示書作成
タイコはどこの部品?これは柱の部分で階になる(フロア)の高さにあります。そこでは仕口を取り付けし、梁と接続する部分があります。仕口を付けるのに本体に当たるところをタイコと呼び、仕口が取り付くと「コア」と呼ばれるようになります。
タイコを設定するには、取り付く仕口の大きさ、サイズで決まります。サイズに合わせて寸法を設定し仕口のフランジ(H鋼はフランジとウェブ、2種類の部分呼称があります。)の板厚+6㎜でダイアフラムの板厚を決めます。鋼材の板厚は規格で決まっていますので規格の中で1番近いものでなおかつ+側のサイスを選定します。
例えば、H-400x200x8x13の見方は、縦寸法(成)x幅xウェブ板厚xフランジ板厚の順に表記されています。ですから、13+6=19なのでダイアフラムの厚みが決まります。ここで18㎜と計算された場合は1サイズアップを選定します。
ではなぜフランジの板厚に+6㎜を加えるかというと、ダイアフラムの板厚の中にフランジの板厚が入っていないといけない。という決まり事があります。これは告示と言って法律で決まっていますから、はみ出した製品は法律違反になります。ここ結構大事なところですからね。
上下にダイアフラムを設定してコラム寸法を計算します。ここでは成に+6㎜をした寸法がタイコの仕上がり寸法になります。タイコの溶接はコラムとダイアフラムを裏当てを使って溶接すると完成になります。溶接は熱を加える工程になります。鉄は熱を加えると伸びて冷えると縮む特徴を持っています。なので縮代と呼ばれる余裕を考えます。ここでは仕上がり寸法を+6㎜にしたいので上下にダイアフラムの溶接2か所にそれぞれ1㎜を加えます。結果組み立てをする時には溶接か所数分の縮代+1㎜を加えていかなければ欲しいサイズになりません。
なのでH400の場合では400㎜(サイズ)+6㎜(フランジが板厚の中からはみ出さないようにする。これを「目違い防止」といいます。)縮代が溶接2か所だとするならば、+2㎜、これらを合計すると408㎜になり組み立て寸法が決まります。
組み立て寸法が決まったら、ダイアの板厚を引き算して裏当ての溶接(ルート7㎜)寸法を引き残りがコラムの寸法になります。こうして組み立てをして溶接をするとタイコとして完成していきます。
ここまでの内容をクリアするのに必用な寸法やサイズを検討して材料を拾っていきます。
ダイアは寸法と板厚と材質をよく確認して枚数を確認します。材質はこれまた重要な部分になります。加工をする分には影響しないので製作している途中では気づかないことがほとんどです。なのでマーキングをして色と数でこの材質が何なのかをわかるようにしておきます。
それぞれの工程をクリアして、諸注意や決まり事を守って初めて完成になります。
H鋼の加工指示書
H鋼は梁材、仕口として使用されます。
梁は大きく2種類あります。大梁と小梁に分けられます。
大梁とはほとんどが仕口から仕口をつなぐ製品のことを指します。柱から柱が多いです。平面を構成するためのメイン部材になります。
小梁は梁から梁へ繋がる形を作る部材になります。階段やエレベーター開口を作ったり、壁の下地で使われたりもします。その他にも梁と梁を繋いで揺れを止める役目もあり、この部品名を振れ止めと呼びます。
仕口は柱に取り付いて大梁が繋がるようにするための部品になります。
H鋼は大きさ種類が多いので、どのサイズを使用しているのかをよく確認しないといけませんね。勘違いして進めていくと後から気づいて訂正する時に大変なことになります。確認作業はいついかなる時でも必須作業になります。1人でも出来ますが、他の人にも確認してもらいたいところですね。
部材寸法を電卓で計算していきます。1本1本の寸法を確認して図面に記入していきます。ほぼ全ての寸法が電卓を使って算出出来ます。計算の仕方が特殊なときもありますが、8割以上はたし算ひき算で回答が得られる事ができます。なので頑張って気をつけて、電卓と向き合います。
寸法がでましたら、それぞれ端部などに接続用の孔などが必要かを見ていきます。ないときは切断のみで良いです。必要な場合は孔加工指示を書きます。接続条件は継ぎ手基準図を見て見ましょう。そこには必ず、「こうしなさい」と書いてあります。ボルトのサイズはいくつなのか?ボルト本数は何本使うのか?接続用の板は何ミリの厚さを使用するのか?など、接続条件を読み取ります。それに合わせて加工指示書を作成していきます。
孔と孔の間隔を「ピッチ」と呼び最近では60㎜が多いですが確認しないと、間違えている可能性があります。ボルトの本数が孔の数になりますので、例えば間隔60㎜で4本のボルトを使って固定しなさいと来たら、「ピッチ60で4個孔」になります。
ボルトも種類があります。鉄骨屋では通常4種類を使っています。M12、M16、M20、M22この4種が使い分けられています。一般的にはボルト径+2㎜の孔をあけてボルト取り合いになります。ピッチと径の確認をして指示書に書き込みます。
仕口の端部は片方の加工は大梁との接続用孔を指示します。(違う場合もあります。確認は大事です。)もう片方は柱(タイコ)にくっつけるための加工をしないといけませんね。この加工は開先加工と呼ばれて、溶接をしやすくするための加工になります。機械加工で出来ますから1次加工で指示をしておきましょう。
ガセットプレートを拾う
ガセットプレートとは小梁の接続等に使われる鋼板に孔があいているものになります。ボルト取り合いの中でも「ピン取り」と呼ばれる取り合いの方法になります。
取り付くサイズ(形状)と入ってくるサイズ(形状)、接続条件(孔ピッチや径)を確認して板厚や必要枚数を数えます。
シャフトを拾う
シャフトはコラムから切り出して端部を開先加工をし、裏当てを取り付けてタイコのダイアと溶接して階と階を繋げる部分をシャフトと呼びます。
シャフトの寸法を電卓で計算していきます。
タイコを拾った時にタイコの寸法は決まっています。階高からその階で使用するH鋼のサイズを引き算します。その時に目違いの3㎜を計算に入れるのを忘れないようにしないといけません。この3を計算から外れていて階高が合わないなんてことはよくある話だと思います。階高はH鋼の上、天端がポイントになりますので、目違いの3はどこでも入り込んできます。
例えば、階高3000㎜でH450x200x9x14の設定で上下にタイコがある場合は、3000(かいだか)-450(H鋼)-3(上階目違い)-3(下階目違い)-ルート間隔(上部溶接用隙間)-ルート間隔(下部溶接用隙間)=シャフト寸法を計算して求めます。
タイコの組み立て時に話しました縮代があります。本来でしたら計算値を階高3000に2か所溶接になるので+2だから3002から計算するのが正解ではないのか?理屈からいけば正解です。しかし溶接か所1箇所につき1㎜必ず縮むかというとそうとは限らないです。タイコの設定では必ずダイアの板厚にフランジの板厚を収めなければいけませんので、安全を見て+1を必ず取ります。その結果が縮んだりそうではなかったりとばらつきが生じます。大抵は「笠折れ」という現象により縮むというよりも折れ曲がる結果になります。ホントのところは1㎜縮まない結果になることが多いです。そうなることを予想して縮代は取らなくても+2の効果を最初から享受している状態が多いです。ただし見込みですから、過信はしないで必ず確認はしないといけません。
スプライスプレートを拾う
スプライスは仕口と大梁を接続する時に使用する鋼板になります。鋼板に孔をあけておいてボルトで縫い合わせる添え板をイメージしてもらうとわかりやすいかと思います。物件によって変わってきますので同じサイズでも板厚や孔数、ボルト径を確認して指示書に書き込みます。必要数を1次加工業者に発注します。
ボルトを拾う
鉄骨屋のボルトはHTB(ハイテンションボルト、高力ボルト)を指す場合が多いです。建物の接続用ではこのボルトを使うことになります。このなかでも種類がありますが代表的な2つを紹介します。
通称「シャーボルト」はボルトの発注の90%がこのボルトになります。特徴としては締める時に専用機械を使用して締めるのですが、先端にピンテイルという部分が有り締め終わるとピンテイルが破断して締め終わっていることが確認出来ます。これをトルクコントロール法といいます。
通称「六角ハイテン」はシャーボルトと同じ強度区分になりますが、締め付ける時の管理方法が異なります。ナットが回転する角度で締め込みを確認する方法で、これをナット回転法といいます。
普通ボルトを中ボルトと呼び、強度区分が先に紹介したボルトよりも弱いので鉄骨本体に用いられることはあまり多くありません。代表例で副材の取り付け、主に胴縁に使用する場合が多いです。
使用箇所や、目的等で用意するものが変わります。なので取り付けするシーンをイメージしなくてはいけない時もあります。
発注をかける(まとめ)
全てを確認して協力会社に発注をします。
発注するまでにいろいろなことを注意しながら、違う視点を持って確認を重ね細心の配慮をしても間違える時は間違えます。ですが、間違いを是とする訳ではありません。拾った経験を積み重ね更に違う視点も見つけられるようになっていくための糧になるようにしなくてはいけません。自分自身が成長出来ていかないといけません。失敗を経験に、真剣に取り組んだ失敗こそ無駄にはなりません。
上手く行った時は素直に喜んでいいと思います。出来て当たり前では楽しくなりません。モチベーションにも繋がりませんし。せめて自分で自分を精一杯楽しませてあげてください。
今回はこれにて失礼します。次回またお会いいたしましょう。